こんには。マサ・アート・スタヂオです。Log撮影したデータをモニターに表示すると,彩度やコントラストが低く,ぼんやりとした眠い画像に見えます。そのため,Log撮影した映像をカラーグレーディングするには,ノーマライズして通常の色域に戻す必要があります。
この記事では DaVinci Resolve を使用して,Log撮影した映像をノーマライズ,すなわちRec.709のカラースペースに変換する3つの方法をご紹介します。最後までご覧頂けると幸いです。
「3D LUT」を適用する方法
シリアルノードの配置
それでは,「3D LUT」から始めていきたいと思います。カラーページを開き,「contrast」「wb」「LUT」という名称の3つのシリアルノードを配置します。

LUTの割り当て
3つ目のノードでは,撮影したLog素材に適したLUTを割り当てます。最初にこちらのLUTの適用から作業を開始します。サンプル動画はLUMIX S5で撮影したV-Logデータなので,ノードを右クリックして「LUT」から「Panasonic」を展開して「VLog_to_V709_forV35_ver100.cube」を選択します。

これでV-Logで撮影したデータを,Rec709のカラースペースに変換できました。

輝度やコントラストを調整したい場合
今回は,黒つぶれや白飛びすることなく良い感じに変換できましたが,明るさやコントラストを調整したい場合は、「1つ目」のノードで作業します。

具体的には,波形をみながらコントラストを調整します。右下の「スコープ」より「波形」を選択します。

ここでは明度を確認したいので,設定を開き「RGB」から「Y」に変更して,「カラー表示」のチェックを外します。

「1つ目」のノードが選択されていることを確認して,左下のプライマリー・カラーホイールより,「コントラスト」と「ピボット」を調整します。「ピボット」とは,コントラストの中心点とお考えください。

波形が1023に触れていると白飛び,0に触れていると黒つぶれしているので,概ね、896から128の間に収まるようにするといいでしょう。

ホワイトバランスの調整を行いたい場合
次に,ホワイトバランスの調整を行います。「2つ目」のノードが選択されていることを確認して、「プライマリー・カラーホイール」の「色温度」と「ティント」を調整してください。

ResolveFX の「カラースペース変換」を適用する方法
シリアルノードの配置
続きまして,ResolveFXの「カラースペース変換」を適用します。こちらも,LUTと同様に「contrast」「wb」「CST」という名称の3つのノードを配置します。

「カラースペース変換」の適用
最初に「3つ目」の「CST」ノードから作業を開始します。右上の「エフェクト」をクリックして、「エフェクトライブラリ」を開きます。「ResolveFX」から「カラースペース変換」を選択して,「CST」ノードにドラッグ&ドロップします。

カラースペースとガンマの設定
「カラースペース変換」の設定が表示されましたら,こちらの「入力カラースペース」と「入力ガンマ」「出力カラースペース」「出力ガンマ」を設定します。

「入力カラースペース」と「入力ガンマ」は撮影したデータにあわせて設定します。今回は,LUMIX S5で撮影したV-Logデータのカラースペース変換を行うため,「入力カラースペース」は「Panasonic V-Gamut」を、「入力ガンマ」は「Panasonic V-Log」を選択します。

「出力カラースペース」と「出力ガンマ」は,出力したい色域にあわせて設定します。今回は「Rec.709」としました。どうでしょうか。「LUT」とは違った仕上がりになりました。

ちなみに,カラースペースの初期値はタイムラインとなっています。タイムラインのカラー設定は,右下の歯車アイコンよりプロジェクト設定を開き,カラーマネージメントから変更することができます。
黒つぶれ・白飛びしている場合の対処法
今回の作例では,スコープを見ると暗部が黒つぶれしていることがわかります。

「カラースペース変換」を適用した後で暗部を調整しようとしても,このように黒つぶれした部分は復活させることができません。

そこで,「カラースペース変換」の前のノード,具体的には「1つ目」のノードで輝度とコントラストを調整します。

右下の「スコープ」より,波形を選択してください。ここでは,コントラストのみを調整したいため,設定を開き「RGB」から「Y」に変更して,「カラー表示」のチェックを外します。

左下のプライマリー・カラーホイールで、「コントラスト」と「ピボット」を調整して、概ね、896から128の間に収まるようにするといいでしょう。

「スコープ」を「パレード」に戻すと,黒つぶれしていたところが,復活していることがわかります。必要に応じて「2つ目」のノードでホワイトバランスを調整してください。

Resolve Color Management(RCM)を使用する方法
プロジェクト設定
最後に,Resolve Color Management(RCM)でカラースペースの変換をご紹介します。画面右下の歯車アイコンを押下して,プロジェクト設定の画面を開いてください。

プロジェクト設定が開いたらカラーマネージメントに移動して,カラーサイエンスを設定します。初期設定では,カラーサイエンスが「DaVinci YRGB」になっているので,こちらを「DaVinci YRGB Color Managed」に変更します。

次に,カラー処理モードと出力カラースペースを設定します。初期状態では,自動カラーマネージメントにチェックが入っています。自動カラーマネージメントのチェックを外すことで,より多くのカラー処理モードと出力カラースペースを選択することができますが,今回はこちらにチェックを入れたまま作業をすすめます。

カラー処理モードは,SDR(標準)とHDR(ハイダイナミックレンジ)を選択できますが,今回はSDRを選択します。

出力カラースペースは,最終的に書き出したいカラースペースを選択します。今回は一般的なSDR Rec.709とします。

設定が完了したら,「保存」ボタンを押下して,プロジェクト設定を閉じます。

入力カラースペースの設定
動画クリップにメタデータが記録されている場合は,自動的に入力カラースペースが適用されます(メタデータの指定がない場合には,Rec.709が適用されます)。正しい入力カラースペースが適用されない場合には,クリップを選択して個別に入力カラースペースを指定する必要があります。

まず,左上の「メディアプール」を開いてください(今回はメディアプール内に「Pnasonic V-Gamut」というビンを作成しています)。

メディアプール内にあるクリップを右クリックすると,「入力カラースペース」という項目が現れます。こちらでクリップごとに入力カラースペースを設定できます。

今回は,LUMIX S5で撮影したV-Logデータのカラースペース変換を行うため,「入力カラースペース」は「Panasonic V-Gamut/V-Log」を選択します。

「入力カラースペース」を「Panasonic V-Gamut/V-Log」に設定することで,V-Logで収録された素材をRec.709に変換することができました。この後,必要に応じて輝度やコントラスト,ホワイトバランスなどを調整します。

まとめ
それでは,カラースペースを変換する前後を比較してみましょう。
■ V-Logで収録された素材

- LUMIX S5 (ホワイトバランス:晴天)
■ 3D LUT を適用した結果

- VLog_to_V709_forV35_ver100.cube
■ ResolveFX(カラースペース変換)を適用した結果

- 入力カラースペース:Panasonic V-Gamut
- 入力ガンマ:Panasonic V-Log
- 出力カラースペース:Rec.709
- 出力ガンマ:Rec.709
■ RCM でカラースペースを変換した結果

- カラーサイエンス:DaVinci YRGB Color Managed
- カラー処理モード:SDR
- 出力カラースペース:SDR Rec.709
- 入力カラースペース:Panasonic V-Gamut/V-Log
以上,Log収録した映像をノーマライズする,3つの方法と,その変換結果の比較を行いました。最後までご覧頂きありがとうございます。